第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

(1) 経営方針

 当社は、「未来のゲームチェンジャーの『まずやってみよう』をカタチに」という経営ビジョンを掲げ、当社の有するAI・統計学・数理最適化といったデータサイエンスの技術とノウハウをもとに、アルゴリズム及びソフトウエアを開発・提供することで、企業の課題解決やチャレンジを支援することを目指しております。

 特に、不正検知サービスを中核サービスとして位置づけ、決済コンサルティングサービス及びデータサイエンスサービスとのシナジー効果を発揮することで持続的な成長を図り、セキュリティ・ペイメント・データサイエンスの技術で新しい価値を作り上げる会社として、企業価値の最大化を図ってまいります。

 

(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための指標

 当社は、売上高の継続的かつ累積的な増加を実現するため、不正検知サービスにおけるストック収益の金額を重要指標としております。

 

(3) 経営環境及び中長期的な経営戦略

 消費者向け電子商取引(BtoC-EC)市場は、経済産業省による調査「令和6年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)報告書」によると、2024年は前年比5.1%増の26.1兆円となり、依然として高い成長率を維持しております。また、EC化率(全ての商取引市場規模に対する電子商取引市場規模の割合)が前年比0.4ポイント増の9.78%となるなど、BtoC-EC市場は依然として着実な成長を続けております。
 一方、クレジットカード番号等の情報を盗まれ不正に使われる「番号盗用被害」が急増している近年の状況を受

け、改正割賦販売法において、クレジットカード番号等の不正な利用を防止するために必要な措置を講じることが

義務化されました。また、その実務上の指針となる、「クレジットカード・セキュリティガイドライン6.0版(クレジット取引セキュリティ対策協議会)」において、EC加盟店におけるEMV3-Dセキュアと不正ログイン対策の導入が必須となり、加えてカード情報保護対策及び不正利用対策が求められるなど、不正対策に対する社会的要請はますます高まっております。

 こうした経営環境下において、当社は、以下の事項を中長期的な経営戦略として、事業推進してまいります。

 

① 不正利用対策レギュレーションの強化と不正検知サービスの機能拡充

 EC市場の継続的な成長に伴い、クレジットカード不正利用被害が高止まりするなか、2025年3月発行の「クレジットカード・セキュリティガイドライン6.0版」ではEMV 3-Dセキュアの導入必須化に加え、不正ログイン対策の導入必須化が新たに規定されました。また、金融領域においても2025年初頭から大手ネット証券を中心に不正アクセス被害が急増し、金融庁による監督指針強化が進んでいます。こうした規制環境の変化を追い風に、当社の不正検知サービス「O-PLUX」および不正ログイン検知サービス「O-MOTION」へのニーズは一層高まっており、当社は以下の施策を通じて不正検知サービスのシェア拡大とサービス価値の向上を図ります。

(a) 「線の考え方」に基づく一貫した不正対策の推進

 「クレジットカード・セキュリティガイドライン6.0版」において、EMV 3-Dセキュアの導入に加え、不正ログイン対策が必須化されました。これにより、決済時のみならず「会員登録・ログイン」から「決済後」までを「線」として捉え、各タイミングにおいて適切な不正利用対策を講じることが重要となっています。当社は、ログイン検知から決済検知まで一気通貫で対応可能なソリューションを提供し、市場の規制対応ニーズに確実に応えてまいります。

(b) 顧客の売上最大化に資する機能拡充

 EMV 3-Dセキュアの義務化に伴い、EC事業者においてカード会社による審査基準の厳格化を起因とした「決済承認率の低下」や、真正ユーザーの離脱を招く「カゴ落ち」が新たな課題となっています。当社は、カード会社との連携強化やリスクベース認証の適用を支援することで、不正を阻止するだけでなく承認率の向上を実現し、顧客の売上拡大に貢献してまいります。

(c) 金融領域における機能拡充とシェア拡大

 大手金融機関を中心とした大規模な不正アクセス被害の急増を受け、金融機関におけるセキュリティ対策の重要性が高まっています。当社は、遠隔操作検知・危険国からのアクセス検知・外部DB連携といった金融特化機能の拡充を進めるとともに、口座開設審査からログイン・取引時までの入口から利用までをシームレスに対策可能な体制構築を支援してまいります。あわせて、内部管理体制の構築支援やデータサイエンスを活用したコンサルティングの提供を通じ、金融機関のセキュリティ対策パートナーとしてシェア拡大を目指してまいります。

② 市場ドメイン単位のマーケティング・セールス戦略への転換

 従来のプロダクト単位の販売戦略から、ドメイン(市場領域)単位でのソリューション提供へと転換することで、顧客獲得のスピードを加速します。特に、不正利用対策が求められるECや金融などのドメインにおいて、各プロダクトを統合したセキュリティ対策として展開し、引き続き以下の施策を実施します。

(a) プロダクト横断型のマーケティング強化

 EC・金融・海外などのドメインごとに最適化された不正対策ソリューションの提供を通じて、企業ごとの課題に合わせた提案を実現し、新規顧客獲得を促進します。

(b) 潜在顧客層へのアプローチ強化

 潜在顧客層に対する認知向上施策を強化し、「O-PLUX」および「O-MOTION」の導入拡大を図ります。特に、不正対策レギュレーションの強化を追い風として、EC加盟店における必須対応事項としての認知を深め、新規市場への浸透を加速します。

③ 業務提携・M&Aを活用した新規事業領域の構築

 当社は、既存事業の成長にとどまらず、新規事業領域の開拓を推進し、収益基盤の多角化を図ります。特に、業務提携・M&Aを活用しながら、サイバーセキュリティ・SaaS型サービスを中心に事業ポートフォリオを拡充し、以下の施策を実施します。

(a) 新規領域への参入と技術獲得

・クラウドセキュリティ、フィッシング対策、エンドポイントセキュリティ領域への進出

・データサイエンス技術を活用した新規SaaS型サービスの開発

・業務提携やM&Aを通じた新技術・ノウハウの獲得

(b) 収益基盤の多角化とシナジー創出

・既存のEC不正検知市場に依存せず、新たな事業領域を開拓

・M&Aによる新規事業の早期収益化

・獲得した技術・サービスを既存プロダクトと統合し、顧客価値を最大化

業務提携やM&Aを積極的に活用し、非連続的な成長を目指してまいります。

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 不正検知サービスの売上高の拡大

 主力の不正検知サービス「O-PLUX」を取り巻く市場環境におきましては、「クレジットカード・セキュリティガイドライン6.0版」の適用開始により、EC事業者に求められるセキュリティ基準が高度化しております。同ガイドラインでは、EC加盟店に対し「EMV3-Dセキュア」の導入に加え、「適切な不正ログイン対策」および「脆弱性対策」の実施が新たに義務付けられました。これにより、EC事業者は従来の決済時点のみの防御から、ログインを含めた取引プロセス全体を網羅した「線の考え方」に基づく一貫した対策が不可避となっております。

 こうした制度的な追い風を受け、当社は、ガイドラインで必須化された広範なセキュリティ要件をワンストップで満たすべく、不正ログイン等を検知する「O-MOTION」と不正注文・決済を検知する「O-PLUX」を連携させたシームレスなサービス展開を強化してまいります。これにより、不正対策およびコンプライアンス対応を急ぐ企業のニーズを的確に捉え、新規顧客の獲得を加速させてまいります。

 また、営業戦略においては、顧客の属する市場ドメイン(業種・業態)ごとの課題に特化した「市場ドメイン単位」の組織体制へと転換を図りました。顧客ごとの状況に合わせた最適なソリューション提案を迅速に行うことで、新規顧客の獲得ならびに収益基盤の着実な拡大に努めてまいります。

 

② サービス開発投資の促進

 当社は、EC市場、セキュリティ市場及びデータサイエンス市場を主たる事業領域としておりますが、近年の技術革新や市場ニーズの変化等により、国内外における競合サービスとの競争が一段と激化してきております。こうした状況の中で、当社は、不正検知サービス「O-PLUX」、不正ログイン検知サービス「O-MOTION」などの当社サービスについて、機能の拡充及び強化を図るべく積極的にサービス開発投資を推進し、今後の成長性及び競争優位性の維持・向上に努めてまいります。

 

③ アライアンス・M&Aの推進

 当社は、既存事業の拡充、関連技術の獲得及び新規事業領域への進出を図るためには、アライアンス・M&Aの活用が有効であると考えております。当社は、当社とのシナジー効果並びに投資の効果及びリスクを見極めながら、アライアンス・M&Aを推進することによって、既存事業の更なる成長を図るとともに、事業領域の拡大及び新たな収益機会の獲得に努めてまいります。

 

④ 優秀な人材の確保及び更なる社員の能力向上

 当社の業容拡大に伴い、優秀な人材の確保及び更なる社員の能力向上が不可欠であると考えております。当社は、即戦力の人材確保を目的とした中途採用と将来を担う人材の確保及び組織の活性化を目的とした新卒採用を積極的に行い、加えて、更なる社員の能力向上を目的とした人材育成・人材開発を強化することで、持続的な成長を支える組織の構築に取り組んでまいります。

 

⑤ 内部管理体制の強化

 当社は、更なる事業拡大及び持続的な成長を遂げるためには、コンプライアンス体制の強化とともに、確固たる内部管理体制の構築を通じた業務の標準化・効率化を図ることが重要であると考えております。当社は、内部統制の環境を適正に整備し、コーポレート・ガバナンスを充実させることによって、内部管理体制の強化を図り、企業価値の最大化に努めてまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 『未来のゲームチェンジャーの「まずやってみよう」をカタチに』を経営ビジョンとし、持続可能な社会の実現に向けて、事業を通じた環境・社会課題の解決と社会の発展に貢献することで、持続的成長と企業価値向上の実現を目指しております。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 当社は、経営の効率化を図ると共に、透明性及び客観性を高め、健全な事業活動を行っていくことで企業価値を継続的に高められると考えており、その実現のために内部統制の仕組、コンプライアンス体制及びリスク管理体制を強化し、コーポレート・ガバナンスを充実させることが重要な経営課題であると認識しております。

 詳細は、「「第4 提出会社の状況」「4 コーポレート・ガバナンスの状況等」(1)「コーポレート・ガバナンスの概要」」をご参照ください。

 

(2)戦略

 当社は、持続的に企業価値を高めていくために、人材への積極的な投資が不可欠であると考えています。したがって、当社は人材の育成及び社内環境整備に関する方針として、社員一人ひとりが自律的に成長できるように、「自己申告制度」「ストレングスファインダー研修」「360度サーベイ」「コーチング制度」等の取り組みを推進するとともに、様々な人材が多様な働き方で能力を最大限に発揮できるように、「フルフレックス制度」「テレワーク制度」「遠隔地居住制度」等を推進することで働きやすい就業環境を整備しております。加えて、「クラブ活動制度」「書籍購入補助制度」等、社員のコミュニケーション活性化および自己啓発に資する取り組みも合わせて実施しております。

 

(3)リスク管理

 当社は、リスク・コンプライアンス委員会において、各種リスク管理の方針等について審議を行い、各担当部門を中心にリスクの評価および対応を実施する仕組みを構築しております。さらに、案件に応じて取締役会への報告を行う仕組みを構築しております。なお、当社が認識している主なリスクについては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

(4)指標及び目標

 当社では、「(2)戦略」に記載した、人材の育成及び社内環境整備に関する方針に係る指標について、本報告書提出日現在において、母集団としての従業員数が少数であり、適切な目標水準の設定が困難であるため、当該指標についての具体的な目標を設定しておりません。今後、関連する指標のデータ収集及び分析を進め、開示項目を検討してまいります。

 

 

3【事業等のリスク】

 

 当社の事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしもリスク要因には該当しない事項につきましても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。

 

(1) 市場の動向について

 当社の主たる事業領域であるEC市場、セキュリティ市場及びデータサイエンスの市場は、インターネット環境の整備、インターネットの利用拡大等を背景に市場規模の拡大を続けておりますが、当該市場を取り巻く新たな規制の導入や、その他予期せぬトラブル等により、市場の成長が鈍化した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 技術革新への対応について

 当社は、提供する各サービスの価値向上のために有効であると思われる新たな技術やノウハウを積極的に取り入れ、サービス機能の拡充及び強化を進めていく方針ですが、技術革新等への対応が遅れた場合や、予想外に開発費等の費用が発生した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 競合について

 当社は、EC市場、セキュリティ市場及びデータサイエンス市場を主たる事業領域としておりますが、当該分野においては、まだ発展途上の市場ではあるものの、今後多くの企業の参入が見込まれ、競合サービスが増加する可能性があります。そのため、十分な差別化や機能向上等が行えなかった場合や、新規参入等により競争が激化した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) プロジェクトの検収時期の変動あるいは収支の悪化について

 当社事業の一部において、顧客の検収に基づき売上高を計上しております。そのため、当社はプロジェクトごとの進捗を管理し、計画どおりに売上高及び利益が計上できるように努めております。しかしながら、プロジェクトの進捗によって納期が変更され、検収時期が遅延し、計画どおりに売上を計上することができない場合があります。

 特に、各四半期、年度末に予定されていた検収が翌四半期末や翌事業年度に遅れると、当該期間での当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) システム障害について

 当社では情報セキュリティマネジメントシステム認証を取得し、リスクマネジメントに努めておりますが、サービスの基盤をインターネットに依存しているため、顧客へのサービス提供が妨げられるようなシステム障害の発生やサイバー攻撃によるシステムダウン等を回避すべく、サーバー設備の強化や稼働状況の監視等により未然防止策を実施しております。

 このような対応にもかかわらず大規模なシステム障害が発生した場合には、サービスの提供に支障をきたし、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) AWSサーバー障害時について

 当社の提供するサービスは、外部クラウドサーバー(Amazon Web Services、以下「AWS」という。)にてサービスを提供しており、AWSの安定的な稼働が当社の業務遂行上必要不可欠な事項となっております。AWSは、世界中に点在する複数の地理的リージョン(注1)及びアベイラビリティゾーン(注2)で運用されており、FISC安全対策基準(注3)を満たす安全性を備えておりますが、AWSの不備や人為的な破壊行為、自然災害等、当社の想定していない事象の発生によるサービスの停止により収益機会の逸失等を招く恐れがあります。このような事態が発生した場合には当社が社会的信用を失うこと等が想定され、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
 

(7) 個人情報保護法による規制について

 不正検知サービスにおいて、利用企業から受領している審査データは、利用企業におけるハッシュ化(注4)等の処理の結果、特定の個人が識別されることのない態様により受領しておりますが、当社は、当該データについて、個人情報保護法に定める個人情報と同等に取り扱うべく、規程や業務フローを制定し、情報管理体制を整備しております。併せて、役員及び従業員を対象とした社内教育を通じて、関連ルールの周知徹底及びルール遵守に対する意識向上を図るとともに、一般財団法人日本情報経済社会推進協会が発行するプライバシーマークを取得しております。

 しかしながら、個人情報が当社の関係者や業務提携先の故意又は過失により、外部へ流出もしくは悪用される事態が発生した場合には、当社が損害賠償を含む法的責任を追及される可能性があるほか、当社並びに運営サービスの信頼性やブランドが毀損し、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 法的規制について

 当社は企業活動に関わる各種法令の規制を受けておりますが、当社の事業継続に著しく重要な影響を及ぼす特有の法的規制は、本書提出日時点において存在しないと考えております。当社は、各種法令の規制を遵守するべく社内体制を整備・強化しておりますが、今後、既存法令等の改正や新たに当社の行う事業を規制する法的規制が適用されることとなった場合、また、不測の事態により、万が一、法的規制等に抵触しているとして何らかの行政処分等を受けた場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 特定の市場への依存について

 2025年12月期における当社の売上高に占める不正検知サービスの売上高の割合は83.6%であり、また、それら取引先は主にEC事業者であることから、特定の市場への依存度が高い状況にあります。本書提出日現在において、EC市場は、将来の成長が見込まれておりますが、今後、予期しない環境の変化により、当該市場の成長に何らかの問題が生じた場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 外注先の確保について

 当社の事業においては、必要に応じて、システムの設計、構築等について協力会社に外注しております。

 現状では、有力な協力会社と長期的かつ安定的な取引関係を保っておりますが、協力会社において技術力及び技術者数が確保できない場合及び外注コストが高騰した場合には、サービスの円滑な提供及び積極的な受注活動が阻害され、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) 特定人物への依存について

 当社創業者である岩井裕之は、当社の大株主かつ代表取締役であり、当社の経営方針や事業戦略の立案及び決定における中核として重要な役割を果たし、新たな事業モデルの創出においても中心的な役割を担っております。当社は権限移譲等を行うことで同氏に依存しない経営体制の整備に努めておりますが、現状、何らかの理由により同氏が当社の業務を継続することが困難になった場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) 新規事業について

 当社は今後も、積極的に新サービスもしくは新規事業に取り組んでまいりますが、これによりシステムへの先行投資や、広告宣伝費等に追加的な支出が発生し、利益率が低下する可能性があります。また、展開した新領域での新規事業の拡大及び成長が当初の予定どおりに進まない場合、投資を回収できず、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13) 配当政策について

 当社は、株主に対する利益還元と同時に、財務体質の強化及び競争力の確保を経営の重要課題の一つとして位置づ

けております。しかしながら、現状では、当社は成長過程にあると考えており、内部留保の充実を図り、事業の効率化と事業拡大のための投資に充当していくことが株主に対する最大の利益還元につながると考えております。このことから、創業以来配当は実施しておらず、今後においても将来の事業展開と経営体質の強化を目的に必要な内部留保を確保していくことを基本方針としております。将来的には、各事業年度の経営成績を勘案しながら株主への利益還元を検討してまいる方針ですが、本書提出日現在において配当実施の可能性及び、その実施時期につきましては未定であります。

 

(14) 新株予約権の行使による株式価値の希薄化に関するリスク

 当社は、役職員等の意欲や士気を高め、一層の収益拡大と体質強化を図ることを目的として、ストックオプション(新株予約権)を発行しております。本書提出日現在、新株予約権(権利行使期間の初日が到来していないものを除く。)による潜在株式数は113,073株であり、発行済株式総数2,732,655株の4.1%に相当します。今後これらの新株予約権が行使された場合には、当社の1株当たりの株式価値が希薄化することになり、将来における株価へ影響を及ぼす可能性があります。

 

(15) 税務上の繰越欠損金について

 当社は、2025年12月期末時点において、税務上の繰越欠損金を有しております。今後、当社の業績が事業計画に比して順調に推移し、繰越欠損金が解消した場合には、通常の税率に基づく法人税、住民税及び事業税が計上されることとなり、当期純損益及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。

 

(16) 人材の確保・育成について

 当社は、経営に不可欠な資源は「ヒト」であり、優秀な人材を確保し従業員満足度を上げることで、社員が最大限の力を発揮できると考えており、適材適所の配置、市場環境に対応できる能力を獲得させるための教育、社内コミュニケーションの円滑化などに努めております。しかしながら、当社が人材の確保、活用、育成強化に十分対応できない事象が発生した場合、経営判断、成長力や競争力が影響を受ける可能性があります。

 

(17) 知的財産権に関するリスク

 当社は、第三者の特許権及び商標権等の知的財産権に関して、外部の弁理士などを通じて調査する等、その権利を侵害しないよう留意するとともに、必要に応じて当社の知的財産権の登録等について申請することで、当該リスクの回避を検討しております。しかしながら、当社の認識していない知的財産権が既に成立している可能性や当社の事業分野で第三者による知的財産権が成立する可能性があることから、当社による第三者の知的財産権の侵害が生じる可能性は否定できず、当社が第三者の知的財産権を侵害した場合には、当該第三者より、損害賠償請求、使用差し止め請求、又はロイヤリティの支払い要求などが発生する可能性があり、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(18) 小規模組織について

 当社は、2025年12月31日現在において、取締役7名、従業員36名と小規模な組織となっており、内部管理体制もこれに応じたものとなっております。当社は、今後の事業規模の拡大に応じて、人員の増強と内部管理体制の一層の充実を図っていく方針でありますが、これらの施策が適時適切に進行しなかった場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(注)1.地理的に独立したサーバーの設置エリアのこと。各リージョン同士は完全に独立しているため、1つのリージョンで障害が発生しても他のリージョンには影響が出ない設計となっている。

2.リージョンの中の個々の独立したデータセンターの名称のこと。

3.金融庁が金融機関のシステム管理体制を検査する際に使用する基準のこと。

4.元のデータから一定の計算手順に従ってハッシュ値と呼ばれる規則性のない固定長の値を求め、その値によって元のデータを置き換えること。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態の状況

(資産)

 当事業年度末における流動資産は876,137千円となり、前事業年度末に比べ12,775千円増加いたしました。これは主に現金及び預金が27,818千円増加したことによるものであります。固定資産は126,212千円となり、前事業年度末に比べ35,699千円減少いたしました。これは主にソフトウエアが34,714千円減少したことによるものであります。

 この結果、総資産は1,002,350千円となり、前事業年度末に比べ22,924千円減少いたしました。

 

(負債)

 当事業年度末における流動負債は221,051千円となり、前事業年度末に比べ95,910千円増加いたしました。これは主に1年内返済予定の長期借入金が94,542千円増加したことによるものであります。固定負債は78,779千円となり、前事業年度末に比べ10,817千円増加いたしました。これは主に長期借入金が9,971千円増加したことによるものであります。

 この結果、負債合計は299,831千円となり、前事業年度末に比べ106,727千円増加いたしました。

 

(純資産)

 当事業年度末における純資産合計は702,519千円となり、前事業年度末に比べ129,652千円減少いたしました。これは主に当期純損失の計上により利益剰余金が137,687千円減少したことによるものであります。

 この結果、自己資本比率は70.1%(前事業年度末は81.2%)となりました。

 

②経営成績の状況

 当事業年度(2025年1月1日~2025年12月31日)における我が国経済は、雇用・所得環境の改善や各種政策により回復を下支えする期待はあるものの、各国の通商政策等による景気の下振れリスクや、物価上昇が消費者マインドの下振れ等を通じて消費に影響を及ぼすリスクがあり、先行きは依然として不透明な状況が続いております。

 消費者向け電子商取引(BtoC-EC)市場は、経済産業省による調査「令和6年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)報告書」によると、2024年は前年比5.1%増の26.1兆円となり、依然として高い成長率を維持しております。また、EC化率(全ての商取引市場規模に対する電子商取引市場規模の割合)が前年比0.4ポイント増の9.78%となるなど、BtoC-EC市場は依然として着実な成長を続けております。

 一方、クレジットカード番号等の情報を盗まれ不正に使われる「番号盗用被害」が急増している近年の状況を受

け、改正割賦販売法において、クレジットカード番号等の不正な利用を防止するために必要な措置を講じることが

義務化されました。また、その実務上の指針となる、「クレジットカード・セキュリティガイドライン6.0版(クレジット取引セキュリティ対策協議会)」において、EC加盟店におけるEMV3-Dセキュアと不正ログイン対策の導入が必須となり、加えてカード情報保護対策及び不正利用対策が求められるなど、不正対策に対する社会的要請はますます高まっております。

 このような事業環境のもとで、当社は「未来のゲームチェンジャーの『まずやってみよう』をカタチに」という経営ビジョンを掲げ、当社の有するセキュリティ・ペイメント・データサイエンスの技術とノウハウをもとに、アルゴリズム及びソフトウエアを開発・提供することで、企業の課題解決やチャレンジを支援する「SaaS型アルゴリズム提供事業」を展開してまいりました。

 不正検知サービスにおいては、当事業年度より、従来の不正検知サービス「O-PLUX」や不正ログイン検知サービス「O-MOTION」などプロダクト単体での販売戦略から、ECや金融などのドメイン(市場領域)ごとに最適化された不正対策ソリューションの提供へと戦略を転換いたしました。主力サービスである「O-PLUX」と「O-MOTION」を組み合わせた包括的な不正対策提案を強化するとともに、不正ログイン審査のモバイルアプリ対応を実現し、主にEC領域や金融領域の市場ニーズに応えてまいりました。また、顧客の導入負荷軽減を目的に、追加機能開発およびECパッケージやショッピングカート事業者とのシステム連携を推進しております。その結果、当事業年度の不正検知サービスのストック収益額(定額課金である月額料金と審査件数に応じた従量課金である審査料金の合計額。)は652,736千円(前年同期比25.3%増)となりました。

 決済コンサルティングサービスにおいては、SaaS型BNPLシステムの受注獲得に努め、また、データサイエンスサービスにおいては、データ分析案件の受注獲得に努めました。

 以上の結果、当事業年度の売上高は819,443千円(前年同期比11.6%増)、営業損失△133,365千円(前年同期は営業損失△244,513千円)、経常損失△137,157千円(前年同期は経常損失△254,501千円)、当期純損失△137,687千円(前年同期は当期純損失△255,031千円)となりました。前々事業年度に生じた主要取引先の解約による売上高の減少が響き、継続して営業損失及び当期純損失を計上しております。加えて、翌期につきましても引き続き営業損失を計上する見込みです。当社といたしましては、上述のターゲット市場別のアプローチによる新規顧客の獲得を推進し、早期の黒字化に向けた収益基盤の再構築に注力いたします。さらに、既存の事業領域にとどまらず、新たな市場獲得に向けた業務提携やM&Aを積極的に活用し、非連続的な成長を目指してまいります。

 なお、当社はSaaS型アルゴリズム提供事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前事業年度末に比べ27,818千円増加し、762,439千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とその要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動により支出した資金は、73,855千円(前事業年度は198,732千円の支出)となりました。これは主に、税引前当期純損失137,157千円によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動により支出した資金は、2,839千円(前事業年度は2,061千円の支出)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出2,839千円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動により得られた資金は、104,513千円(前事業年度は5,677千円の支出)となりました。これは主に、長期借入れによる収入120,000千円によるものであります。

 

④生産、受注及び販売の実績

(a) 生産実績

 当社は生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

(b) 受注実績

 当社が行う事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

(c) 販売実績

 当事業年度の販売実績は次のとおりであります。なお、当社はSaaS型アルゴリズム提供事業の単一セグメントであるため、サービス別に記載をしております。

サービスの名称

当事業年度

(自 2025年1月1日

  至 2025年12月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

不正検知サービス

685,223

123.99

決済コンサルティングサービス

50,968

56.08

データサイエンスサービス

57,786

105.53

その他

25,465

71.24

合計

819,443

111.64

(注)1.当事業度において、販売実績に著しい変動がありました。これは、決済コンサルティングサービスにおいて、取引停止があったこと等によるものであります。

2.主な販売先については、総販売実績の100分の10以上の販売先がないため、記載を省略しております。

 

 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

①重要な会計方針及び見積り

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成に当たりまして、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りを行うにあたり、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積による不確実性のため、これらの見積りと異なる結果をもたらす場合があります。当社の財務諸表で採用する重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。

 また、財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。

 

②当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当事業年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

④資本の財源及び資金の流動性についての分析

 当社は、事業活動に必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

 当社の資金需要のうち主なものは、システム運用に係る原価、販売費及び一般管理費等の営業費用であり、投資を目的とした資金需要は、システム開発への投資によるものであります。

 これらの資金は、自己資金、金融機関からの借入、新株発行等により資金調達していくことを基本としておりますが、財政状態を勘案しつつ、資金使途及び需要額に応じて、柔軟に検討を行う予定であります。

 なお、当事業年度における借入金等の有利子負債の残高は186,648千円となっております。また、当事業年度における現金及び現金同等物の残高は762,439千円となっております。

 

⑤経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の進捗状況

 「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、当社は経営上の目標の達成を判断するための客観的な指標として、不正検知サービスのストック収益の金額を重要な経営指標と位置づけております。

 

 

2023年12月期

2024年12月期

2025年12月期

不正検知サービスのストック収益(千円)

705,497

520,790

652,736

 

5【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社は、日々複雑化・多様化する不正(不正注文、不正アクセス等)に対抗していくため、最新の不正手口及び技術情報の調査及び基礎研究を行うとともに、市場ニーズに応える新たな機能の製品化のための活動等を行っております。

 当事業年度における研究開発費の総額は、37,282千円であります。なお、当社はSaaS型アルゴリズム提供事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。