第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末時点において当社が判断したものであります。

 

(1)経営環境

 日本では、再生医療の承認を後押しする仕組みや法制度が導入されており、国として再生医療の開発を支援している状況にあります。2014年11月には薬機法が改正され、再生医療等製品では、有効性が推定され安全性が確認されれば、条件及び期限付きで特別に早期に承認できる仕組みが導入されました。また、2015年4月には、「画期性」「対象疾患の重篤性」「極めて高い有効性」「世界に先駆けて日本で申請」を満たす臨床開発中の医薬品及び医療機器に対して、審査期間の早期化や当局との事前相談に関する優先的支援などを提供する「先駆け審査指定制度」が試行的に運用開始されました。その後、2019年11月には更に薬機法が改正され、恒常的な活用のために「先駆的医薬品等指定制度」として法制化されています。革新的な医薬品に対する臨床開発上の優遇措置を、日本政府は強化しています。

 このような環境のもとで、2014年以降13品目の再生医療等製品が日本において承認されています。そのうち2022年には、角膜上皮幹細胞疲弊症に向けた細胞シートに加え、難治性の多発性骨髄腫向けの製品、合計2品目が承認されています。iPS細胞を活用した再生医療等製品の開発においても、まだ承認事例はないものの、国内では、国立研究開発法人理化学研究所が2014年に世界で初めてiPS細胞を使う臨床研究を実施したほか、2018年には京都大学がパーキンソン病患者さんに対してiPS細胞を使った治療の医師主導治験、2019年には指定国立大学法人大阪大学(以下「大阪大学」という。)がiPS細胞から作製した角膜上皮細胞シートの臨床研究、2020年には重症心不全患者さんに対して大阪大学がiPS細胞から作製した心筋シートの医師主導治験、2021年には慶應義塾大学が脊髄損傷患者に対するiPS細胞由来神経前駆細胞の臨床研究、さらには2022年に京都大学においてiPS細胞由来HLAホモ型血小板の企業治験が実施されるなど、治療法の確立に向けて臨床開発が進んでいます

 

(2)経営方針・経営戦略

 当社は、世界の死因の第一位を占める心臓病に焦点を当て、「再生医療で心臓病治療の扉を開く」ことをミッションとして重症心不全の抜本的治療法の開発を進めております。当社の心筋再生医療は、これまでの細胞治療とは一線を画す、弱まった心臓を再生心筋で置き換える、”Remuscularization(心筋補填療法)”と呼ばれるものです。投与した心筋細胞が患者さんの心臓の中に生着して長期間機能することを期待する治療法であるがゆえに、投与細胞の製造には高い安全性が要求され、サイエンス・技術面での参入障壁が非常に高い領域ともいえます。当社は、本領域の治療法として非臨床試験を完了させ患者投与での検証に入っている世界的にも先駆的な事例となっております。

 このような競争環境の中で、虚血性心疾患に伴う心不全患者を対象とする他家iPS細胞由来心筋球の開胸投与による治療プログラム(HS-001)においては、まず現在実施中のLAPiS試験を完了させ、その後日本での条件及び期限付き承認を目指して販売収益が上がる体制にすることとしております。

 同時に、患者さんにとって負荷の少ないカテーテル投与による治療プログラム(HS-005)の国内での臨床治験を進め、重症心不全に苦しむ日本の患者さんのみならず、世界の患者さんにも当社の心筋再生医療を届けることを目指しております。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

 当社は現在、研究段階の企業であり販売承認を取得した製品群を保有しておらず、現段階においては、リードパイプラインを中心とした早期の上市を目指し、研究開発及び臨床試験の進捗状況及び研究開発資金と費用のバランス等を注視しながら、事業を推進しております。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 臨床応用の加速

<HS-001について>

当社は、虚血性心疾患患者を対象とした冠動脈バイパス手術併用下の第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験(LAPiS試験)を実施しております。独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に受理された治験計画に基づき、低用量群5例および高用量群5例、計10例への投与を完了し、現在は経過観察中であります。

引き続きCRO(開発業務委託機関)や治験参加施設との連携を強化し、本治験について着実な進捗を図ってまいります。

 

<HS-005について>

低侵襲なカテーテル投与による治療プログラム(HS-005)については、国内での臨床試験開始に向け、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)へ治験届を提出いたしました。2026年内の被験者への投与開始という目標に向け、治験施設の選定等も順調に進んでおります。HS-001と同様に、CRO等の外部パートナーや治験参加施設との連携を深め、早期の臨床応用を目指します。

② 中長期的事業基盤構築に向けた取り組み

事業パートナーであったノボノルディスク・エーエスとの独占的技術提携・ライセンス契約が解消された結果、導出していた開発・製造・販売に関する権利および知的財産権等は当社へ返還され、HS-001およびHS-005に関する全世界の権利を当社が保持することとなりました。

今後は、自社保有のプラットフォーム技術および知財のさらなる拡充を図り、将来的な収益の極大化に向けた事業基盤の強化を目標として、戦略的に事業を推進してまいります。

③ 財務基盤の強化

当社は、リードパイプラインであるHS-001での早期収益化を目指す中、2025年12月末時点の現預金残高は6,836,009千円、純資産額は7,194,912千円です。上市資金のほか、中長期的な事業拡大に向け研究開発資金を安定的に確保するため、株式市場からの調達に加え、銀行融資や補助金の活用を検討することで資金調達手段の多様化を図り、財務基盤の強化に努めてまいります。

④ 組織体制の整備及び人材育成

持続的な成長と中長期的な企業価値向上のため、優秀な人材を確保し定着を図るべく、組織体制を整備し、従業員のモチベーションの維持・向上に努めていくとともに、一人ひとりの従業員の能力開発や働きやすい環境を構築してまいります。具体的には、離職者を低減させるため、働きやすさの追求、キャリアのための教育、および健康・メンタルヘルスへの配慮を方針として、人事施策を実行してまいります。

⑤ コーポレート・ガバナンス体制の強化

 当社は、持続的な成長と中長期的な企業価値向上のため、経営の公正性・透明性を確保することは極めて重要な経営課題であると認識しております。

 取締役会においては、社外取締役の専門的な知見や経験を経営判断に反映させることで、意思決定の妥当性と監督機能を強化しております。さらに2025年2月に、取締役会の諮問機関として、過半数が独立社外役員からなる報酬委員会を設置し、役員報酬の決定について公正性・透明性・客観性を担保するよう努めております。

 また、役職員が倫理・コンプライアンスに関して共通認識を保持し、公正で的確な意思決定を行う風土を醸成するため、内部通報制度の周知徹底、定期的なコンプライアンス研修を実施しているほか、代表取締役社長を委員長としたコンプライアンス・リスク管理委員会のもと、コンプライアンス遵守状況のモニタリングおよびリスクの早期発見・未然防止に向けた施策の策定を行っております。特に、研究開発に関する事象について、社内倫理委員会を設置し、倫理的および科学的妥当性についてモニタリングを行っております。

 さらに、投資家の皆様に対し、研究開発の進捗状況や事業リスクを適時かつ公平に開示することで、市場との建設的な対話を促進してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

当社は、「再生医療で世界を変える」というビジョンのもと、「命と向き合い続ける」「常に先駆者であれ」といった5つのコアバリューを組織の基盤に据え、心筋移植しか有効な治療法のない重症心不全患者さんに新しい治療手段を提供するための事業活動を行っております。

このビジョンを実現し、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を図るためには、独創的な技術開発と事業運営を担う人材が最大限に能力を発揮できる環境を構築することが重要であると認識し、サステナビリティ経営を推進しております。

 

(1) ガバナンス

 当社は、中長期的な企業価値の向上のため、サステナビリティを巡る課題への対応は経営の重要課題と認識しております。「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」に記載のコーポレート・ガバナンス体制のもとで、持続可能な社会の実現と当社の継続的な企業価値の向上を目指しております。また、コンプライアンス・情報セキュリティ等においても継続的な活動の改善及び強化に取り組んでおります。

 

(2) 戦略

 当社は、メインパイプラインの開発を加速させ、さらに事業を拡大するには、人的資本への投資が最も重要であると認識しております。すなわち、従来のメンバーと新規に参画するメンバーとのシナジーが不可欠であり、組織としての力を高めていくための投資を積極的に行う方針です。具体的な方針は以下のとおりです。

① 人材育成方針

 当社では、役職員が自らの意思で知識を吸収し、広い視野を持てる環境を整備しております。 具体的には、外部講師を招聘した研修や学会・セミナー参加による最新情報の獲得支援や、オンライン学習環境の導入による自己研鑽の促進を行っております。また、従来からの開発担当者と新メンバーが融合し、組織力を高める関係構築を重視しております

② 社内環境整備方針

 離職者を低減させ、長く安心して働ける環境を構築するため、ワークライフバランスと健康管理を推進しております。 働きやすさの追求として、テレワークの推奨に加え、有給休暇の取得を推進しております。

 また、健康・メンタルヘルスへの配慮として、定期健康診断の受診率100%維持を目標とし、人間ドック受診促進やストレスチェックを実施しているほか、深夜残業を含む過度な残業の防止にも努めております

 

(3) リスク管理

 当社は、各部門において定期的にリスクを抽出し、頻度及び影響度の観点からリスクを評価し、重要性に応じて当該リスクへの対応(回避・低減・移転・受容)をしております。当該リスクの評価及び対応について、当社のコンプライアンス・リスク管理委員会へ定期的に報告され、モニタリングされます。また、人事面においては、公正かつ客観的な評価を行うための制度を整備し、研究開発面につきましても、社内倫理委員会を設置し、倫理的及び科学的妥当性についてモニタリングを行っております。

 

(4) 指標及び目標

 当社では、上記「(2)戦略 ②社内環境整備方針」のとおり、サステナビリティ戦略において人的資本を重要視しております。指標として中期的な目標達成に向けて人的投資を進めてまいります。

指標

目標

実績

(当事業年度)

参考

離職者数

0

1

法定有給取得率

100%

100%

有給取得日数:

1人当たり20日/年

研修受講率

100%

100%

Eラーニング利用時間:1人当たり5.86時間/年

1人当たり159,023円/年

健康診断・人間ドック等受診率

100%

100%

人間ドック等利用率:84%

深夜残業時間

1人当たり

1時間程度/月

1人当たり

0.48時間/月

テレワーク利用率

30%

45%

 

3【事業等のリスク】

 当社の事業運営及び展開等について、リスク要因として考えられる主な事項を以下に記載しております。中には当社として必ずしも重要なリスクとは考えていない事項も含まれておりますが、投資判断上、もしくは当社の事業活動を十分に理解する上で重要と考えられる事項については、投資家や株主に対する積極的な情報開示の観点からリスク要因として挙げております。

 当社はこれらのリスクの発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の適切な対応に努める方針ですが、当社株式に関する投資判断は、以下の事項及び本項以外の記載もあわせて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えます。

 また、当社は、再生医療等製品の開発を行っております。一般的に再生医療等製品を含む医薬品等の開発には長い年月と多額の研究費用を要し、パイプラインの開発が必ずしも成功するとは限りません。特に研究開発段階のパイプラインを有する製品開発型バイオベンチャー企業は、事業のステージや状況によっては、一般投資者の投資対象として供するには相対的にリスクが高いと考えられており、当社への投資はこれに該当します。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであり、将来下記に挙げたリスク以外で当社に関する重要なリスクが発生する可能性があります。また、当社はこれら事業等のリスクを認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応を図り事業活動を行っておりますが、このような諸策の成否には不確実性が存在します。

 

(1)技術革新及び競合に関するリスク(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:中長期、影響度:大)

 再生医療分野及びiPS細胞等の分野では、世界中で研究競争が盛んに行われており、飛躍的な技術革新が短期間で進んでいます。今後、革新的な技術が開発された場合、既存技術の大幅な改善がされた場合、遺伝子治療等新規の治療法について技術革新が生じた場合及び新規参入等の状況によっては、従来の技術が陳腐化するリスクがあります。このため、当社は、大学や公的研究機関と連携し、最先端技術の開発に先行して取り組むとともに、常に最新の技術動向の把握に努めております。

 競合につきましては、大手企業を中心に、新興企業、研究機関等が増加傾向にあるほか、今後の市場拡大を見込み、参入機会を窺っている企業も存在すると思われます。このような競合相手が新たな技術を開発し、当社の技術を上回った場合、あるいは関連特許を取得した場合及び当社より先に上市した場合等には、当社の開発する製品の販売が行えない可能性、あるいは市場において他社が優位を確立しており、当社の製品のマーケティングが困難となる可能性または当社が事業計画において想定していた売上を達成できず、研究開発費用を賄うことができない等の可能性があります。かかる事象が生じた結果、当社の経営成績及び事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)再生医療ビジネスに関する想定外のリスク(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

 当社は、「薬機法」等の関連法令に準拠し、再生医療等製品の臨床試験を進めてまいります。リードパイプラインであるHS-001では、虚血性心疾患を原疾患とする心不全に向けたLAPiS試験(低用量5例:0.5億個の心筋細胞投与、高用量5例:1.5億個の心筋細胞投与)において、全10例の投与及び52週のフォローアップを完了いたしました。他方、HS-005においては、虚血性心疾患及び拡張型心筋症それぞれの原疾患由来の心不全に関して、全14例のEMERALD試験(それぞれ7例:1.5億個の心筋細胞投与)を実施すべく準備を進めております。これらの試験に先立ち、サルや小動物を用いた非臨床試験において有効性及び十分な安全性マージンを確認した上で、LAPiS試験を開始したほか、EMERALD試験向けにはカテーテル投与が可能かについてブタを用いた非臨床試験にて確認をしております。加えて、LAPiS試験開始後に開示した試験結果等においても、有効性及び安全性を示すデータを取得しております。

 しかしながら、今後実施する心筋細胞に関連する治験において、事前に想定していなかったような予期せぬ安全性懸念が発生する可能性は、現時点で完全には否定できません。さらに、患者リクルーティングが難航することなどによる臨床試験の遅延や、承認申請及び審査過程での遅延が生じる懸念があります。場合によっては臨床試験の中止や承認が得られず製品の上市に至らないリスクがあるほか、臨床試験の遅延や予期しない問題点への対応により、研究開発費が見込みより増大するリスクも存在します。各治験施設の責任医師や、関連するステークホルダーとの十分な連携を行うことなどによりリスクの低減を図っておりますが、当社の製品の上市や研究開発活動が当初の予定どおり進まない場合、当社が想定する売上の獲得が遅延・減少・喪失などする可能性があり、当社の経営成績及び事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)再生医療等製品に関連する法規制のリスク(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:中長期、影響度:中)

 当社が規制を受けている再生医療等製品に関する法規制については、技術革新や想定外の事態の発生等に対応し、継続的に見直しがなされる可能性があります。当社が戦略的に依拠している薬機法による「条件及び期限付承認制度」において、審査期間の長期化、必要とされる臨床試験数の増加、審査要件の追加・修正等の変更が生じた場合、当社製品の上市時期や上市に必要な臨床開発計画に大きな変更を余儀なくされる場合や、当社の想定した内容での承認が得られない場合があります。加えて、近年は医療費の引き下げ圧力が強まる傾向にあります。中央社会保険医療協議会(中医協)等における議論をはじめ、厚生労働省の薬価に対する考え方の見直しによって薬価制度が変更された場合、上市後の薬価が当社の想定する製品価値を下回るなど、将来の収益見通しに大きな影響を及ぼす懸念があります。

 当社は、こうした見直しにいち早く対応すべく体制の整備に努めております。しかしながら、今後これらの法令や制度等に重大な改廃があり当社の開発想定に影響が及んだ場合には、研究開発進捗の大幅な遅延、研究開発費用の増大、あるいは想定より低い薬価の算定などを招くおそれがあります。かかる事象が生じた結果、当社の経営成績及び事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)条件及び期限付承認取得後のリスク(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:中長期、影響度:大)

 日本では2014年11月の薬機法の改正に伴い、再生医療等製品にて有効性が推定され安全性が確認されれば、対象とする医療機関等の限定や追加の臨床試験等の条件を付し、承認に有効期限を設けることで早期に承認を取得できる条件及び期限付承認制度が導入され、当該制度の導入後多くの再生医療等製品が上市されております。そのため、当該制度によって可能な限り条件及び期限付承認を取得して開発中の再生医療等製品の早期実用化を目指すことを、当社では最重要戦略として位置付けて臨床開発を進めており、LAPiS試験においても、当該制度の活用を念頭に置いての臨床試験デザインを立案しております。

 他方で、条件及び期限付承認制度では、通常の医薬品開発では承認申請時に求められる大規模臨床試験による安全性や有効性の確認を上市後に行うという制度要件となっています。そのため、当社再生医療等製品の条件及び期限付承認後には、一定期間にわたり製造販売後調査を課されることが予見されます。

 当社では各治験施設の責任医師や規制当局など関連するステークホルダーと連携することで、リスクの低減を図っておりますが、当該製造販売後調査の開始後、当社製品の有効性や安全性が不十分である場合、予期せぬ副作用が発生する場合、調査の結果に関する当社と当局との間の見解の相違が生じる場合、または要請された症例数や承認要件を満たせない場合には、本承認を取得できない可能性や条件及び期限付承認が取り消される等の可能性が存在しております。かかる事象が生じた結果、当社の経営成績及び事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)特定のパイプラインへの依存について(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

 当社は現在、複数のパイプラインを推進するとともに、新規パイプラインの開発にも注力しております。メインパイプラインであるHS-001は、LAPiS試験の52週フォローアップが完了しデータがほぼ出揃っております。他方で、HS-005はEMERALD試験の初期段階にあり、さらに、新規パイプラインは基礎研究の初期段階にあります。これらのパイプラインや今後検討を開始する製品等について、製品化及び収益化に至るかは非常に不確実であり、仮に、製品化が可能となった場合でも、相当程度の期間及び費用を要するものと考えております。

 具体的には、技術的な困難や競合による開発の先行、技術革新、法規制の変更、当社の人材不足、サプライチェーン構築の不確実性といった制約要因が存在します。これにより、研究開発から製品化・収益化に至るまでの過程において、想定以上の時間や費用を要する、あるいは期待する進捗や成果が得られない可能性があります。

加えて、仮に研究開発に成功した場合であっても、臨床試験段階や上市後において、予期せぬ品質問題や副作用等が発生するリスクも存在します。

 当社は、開発の各フェーズにおけるリスク管理や行政当局とのコミュニケーション、開発に必要な資金の確保などを通じて、これらのリスク低減に努めてまいります。しかしながら、以上の問題が顕在化した場合、新規パイプラインによる収益が見込めなくなる懸念があります。その結果、リードパイプラインであるHS-001への収益依存度が増し、同製品の開発や販売状況に大きく左右されることとなり、当社の経営成績及び事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)製造・輸送・販売体制の構築に関する不確実性について(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

 当社は、研究開発活動にとどまらず、その後の製造、輸送及び販売を見据えた事業展開を視野に入れ、細胞の大量培養技術の開発をはじめとする製造方法の確立に注力しております。しかしながら、医薬品の開発・製造には多岐にわたる高度な技術が求められます。そのため、今後何らかの理由でこれらの体制構築が困難となった場合、治験薬や承認後の製品供給に遅延が生じる懸念があります。かかる供給遅延により、臨床試験の中止や撤回を余儀なくされるリスクに加え、体制の再構築に多大な時間と費用を要するリスクが想定されます。また、サプライチェーンにおいても特有のリスクが存在します。製造場所、原材料、製造プロセスの変更が生じた際や、当局から提出データ・管理体制の十分性や信頼性に疑義が示された場合には、追加の説明やデータ提出が求められます。その結果、再度の非臨床試験や臨床試験の実施を指示される可能性や、臨床試験、承認申請、あるいは販売の中止・撤回を要請されるおそれがあります。さらに、販売承認後のフェーズにおいても、先端技術を用いた新規性の高い製品であるため、適切な需給予測が困難となることや、患者様から想定以上の忌避感が生じる懸念があります。加えて、期待された治療効果や費用対効果が達成できない場合や、国内外のプロモーション等に関する規制違反により訴訟・罰金の対象となった場合には、計画していた売上の獲得に至らない可能性があります。

 当社は、製造拠点、原材料、輸送体制などサプライチェーンを担う各企業との連携強化に努めるとともに、細胞の保存技術の開発を進めること等を通じて、これらのリスク低減を図っております。しかしながら、以上のリスクが顕在化した場合、当社の経営成績及び事業展開に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)他社からの原材料供給(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:大)

 再生医療等製品の開発や販売開始後の安定供給について、当社は多くの協力企業との取引によって、必要な原材料や資材等の調達を受けております。特に、製造プロセス中に用いる原材料や試薬、投与に活用する針やカテーテル等は代替性が乏しく、仮に代替品に変更できたとしても現状の開発スケジュールを大きく遅延させる可能性があります。この点、協力企業との供給契約を締結し安定供給を確保できるように努めております。

 外注先の取引方針の変更、供給能力の低下もしくは品質の低下、または自然災害及びこれに起因する事象等により現在の協力企業への委託が困難になった場合、当社は代替外注先探索などの対応を行います。しかし、適切な企業の発見が困難である可能性に加えて、仮に適切な企業を発見できたとしても製造体制再構築に相応の時間及び費用を要する場合、あるいは当社に不利な内容での契約締結を余儀なくされる場合等が発生した場合は、当社事業に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)予期せぬ副作用及び製造物責任等の発生について(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:大)

 当社の開発品である再生医療等製品を含む製品には、臨床試験段階及び上市後においても、予期せぬ品質問題や副作用等が発生する可能性があります。

 そうした事態に備え、当社では、入念な製造方法の移管プロセスを経た上で、現在進捗中の臨床試験製品を再生医療等製品の製造や品質管理に実績のある製造開発委託機関(CDMO)に委託しております。また、医薬品開発上求められる安全管理に関しても臨床開発や販売停止・中止に関して独立した権限を持つ信頼性保証部を社長直下に組成し、不測の事態に対応できる体制を整備しております。さらに、実施中の臨床試験においても、製造物責任を含めた各種賠償責任に対応するための適切な保険に加入する予定です。

 しかしながら、こうした安全管理が何らかの理由や事象で十分でなかった場合、当社の賠償責任が保険金額を上回る場合、あるいは当社に対する損害賠償の請求が認められずとも製造物責任請求等がなされたことによるネガティブ・イメージを受けた場合には、当社及び当社の製品に対する信頼に悪影響が生じる可能性があります。

 さらに、当社の治療法に品質問題や予期せぬ副作用発現等の問題が発生した場合には、製品回収もしくは販売中止、医療機器の仕様変更等の対策の実施もしくは臨床試験の中止、製品の安全性に関する追加データの当局への提出、または再度の試験の実施もしくは罰金の命令等により、医薬品の売上の減少及び多額の費用が発生する可能性があります。

 かかる事象が生じた結果、当社の経営成績及び事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)知的財産権に関するリスク(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:大)

 当社における知的財産権のリスクは、主に当社の特許権が第三者に侵害されるリスクと、当社が第三者の特許権を侵害するリスクがあります。当社の技術保護に向けては、研究開発で得られた成果を必要に応じて迅速に特許出願し、各種データベースや特許事務所を活用して情報収集に努めております。しかしながら、出願中の特許がすべて成立する保証はなく、仮に成立した場合でも、他社による優れた研究開発によって当社の技術が淘汰される可能性は常に存在します。万が一、第三者によって秘密裏に当社の特許が侵害された場合、当社の技術的優位性が損なわれるおそれがあります。特許侵害を認識した際には必要な法的措置を検討する方針ですが、保有する特許権の範囲が事業保護に十分でない場合や、費用対効果・特許無効審判等を提起されるリスクを勘案し、あえて法的措置を見送る場合もあり得ます。その結果、当該第三者が当社と競合する事業を行う展開を許し、当社が期待していた収益が失われるリスクがあります。当社の権利侵害を未然に防ぐ点においては、事前の情報収集を徹底し、適法な手続きのもとに事業に必要な特許権を使用しております。しかし、事前の特許調査等でも認識できず、意図せずに第三者の知的財産権に抵触する可能性を完全に排除することはできません。他社の権利への抵触を認識した時点では、遅滞なく実施許諾(ライセンス)契約の締結を図る方針です。しかし、事業が拡大すればこうしたリスクは増大するため、適時・適切な契約締結が困難な場合や、ライセンサー側が他の第三者の知的財産権に抵触している場合等には、当社に対し製品の製造販売の差止請求や多額の損害賠償を請求される可能性があります。

 加えて、当社は各種公的機関や共同研究先から事業に不可欠な特許の実施許諾を受けております。当該機関・企業との良好な関係の維持・構築に努めておりますが、何らかの事由によりこれらの協力が得られなくなる懸

念もあります。以上のような知的財産権に関する訴訟やトラブルが顕在化し、当社の主張が認められない場合、または解決に想定以上の費用や時間を要する場合には、当社の事業計画に大きな支障をきたし、当社の経営成績及び事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)資金繰り(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:中長期、影響度:大)

 当社は研究開発期間において継続的に営業損失を計上するため、開発品が上市され安定的な収益源が確保されるまでの間、営業活動によるキャッシュ・フローはマイナスとなる傾向があります。

 当社の開発品は現在において上市に至っておらず、製品化までには多額の費用を要します。具体的には、研究開発や臨床試験の実施、必要となる許認可の取得、製造・輸送・販売体制の確立に加え、経営体制の維持・拡充や知的財産の運用体制の構築などが挙げられます。さらには、開発プロセスには不確定な要素が多く存在します。臨床試験の実施時期や当局による許認可の時期、追加的な研究開発の要否などによって、資金需要が増加するタイミングを正確に予測することが困難となる傾向があります。

 当社といたしましては、増資による資金調達を中心に、取引先銀行との融資契約やコミットメントライン契約、各種補助金等の活用を検討することで安定的な資金確保に努める方針です。しかしながら、必要な時期に十分な額の資金を確保できなかった場合には、当社の財務状況や事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)重要な契約等に関するリスク(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

 当社の重要と思われる契約は、「第2 事業の状況 5 重要な契約等」に記載のとおりであり、これらに基づき事業推進に必要な支援を得ております。今後も、研究開発や製造・輸送・販売体制の構築に向けて、様々な企業との事業提携を見込んでおります。

 しかしながら、これら既存及び将来の契約において、期間満了や解除等による終了、当社に不利な条件改定が発生する懸念があります。加えて、相手先企業・機関の経営状態の悪化や経営方針の変更など、当社がコントロールできない事情により契約の継続が困難となった場合、代替となる提携先との再契約に多大な時間と費用を要する、あるいは代替先を確保できず円滑な事業運営に支障をきたすおそれがあります。

 提携に伴う知的財産権の取り扱いについても留意が必要であり、共同研究等によって生じた発明に基づく特許権が、相手方との共有名義になる、あるいは他社に帰属する可能性があります。当社の事業領域における独占的実施権の確保に努めておりますが、仮に他社への権利帰属によって追加の実施料支払いが生じた場合や、他社による当該権利の実施を制限できない場合には、今後の研究開発や製品販売に支障が生じる懸念があります。

 これらの事象が顕在化した場合、当社の財務状況及び事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)人材の確保に関するリスク(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:大)

 当社の成長戦略を実現するためには、高度な専門的知識、技能及び経験を有する人材の確保並びに育成が不可欠といえます。当社は、常に優秀な人材の確保と育成に努めておりますが、人材確保及び育成が順調に進まない場合、並びに人材の流出が生じた場合には、当社の事業活動に支障が生じ、当社の経営成績及び事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)内部管理体制について(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

 当社の事業の運営に当たっては再生医療等製品、医薬品、医療機器に関する法令、自主規制等が及ぶ他、より一般的に製造物責任、情報保護、知的財産権、競争法、消費者保護、腐敗防止、税金等、各国での法令等の規制が及ぶことから、当社は、コンプライアンス及びコーポレート・ガバナンスの強化を図るための様々な施策を実施しております。また、業務の適正化及び財務報告の信頼性を確保するため、これらに係る内部統制が有効に機能する体制を整備、運用しております。しかしながら、事業の急速な拡大や、主要メンバーの離職、経営環境の大幅な変化等の理由により、内部管理体制の構築が追い付かないという状況が生じる場合には、適切な業務運営が困難となり、当社の経営成績及び事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)小規模組織であることについて(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

 当社の業務執行体制及び経営管理組織は、事業規模に応じた比較的小規模なものとなっており、大企業と比べると、業務の遂行能力は、個々の経験や能力に大きく依存していると考えられます。業務を遂行するために最適と考えられる体制を構築し続けるとともに、今後の事業拡大に伴い積極的な人員の増強、経営管理組織の一層の充実を図る方針です。しかしながら、当初計画を超えた規模で事業が成長するため体制構築が追い付かない場合や、新たな人材の採用及び育成が順調に進まず、離職者が発生する場合などには、組織的な対応が有効に機能しないことが考えられ、これにより当社の経営成績及び事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)内部統制に関するリスク(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:大)

 当社は法令に基づき財務報告の適正性確保のために内部統制システムを構築し運用しておりますが、当社の財務報告に重大な欠陥が発見される可能性は否定できず、また、将来にわたって常に有効な内部統制システムを構築及び運用できる保証はありません。さらに、内部統制システムに本質的に内在する固有の限界があるため、今後、当社の財務報告に係る内部統制システムが有効に機能しなかった場合や財務報告に係る内部統制システムに重大な不備が発生した場合には、当社の財務報告の信頼性に影響を及ぼす可能性があります。

 

(16)社歴の浅さについて(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

 当社は、2015年11月に設立され2024年7月から上場する社歴の浅い会社であり、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の期間比較の情報が限られております。今後のIR活動などを通じて経営状況を積極的に開示してまいります。しかしながら、経営成績等の期間比較をするための情報には時間の経過が不可欠であり、今後当社が成長を継続していけるか否かを現時点において予測するためには、過年度の経営成績のみでは客観的な判断材料として不十分な可能性があります。

 

(17)配当政策について(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:小)

 当社事業の特徴として、多額の先行投資を要し、投資回収までの期間も長期に及ぶことから当社は創業以来、株主に対する剰余金の分配を実施しておりません。

 株主への利益還元については、重要な経営課題と認識しており、将来的には経営成績及び財政状態を勘案しつつ剰余金の分配を検討する所存であります。しかしながら、現時点においては繰越利益剰余金がマイナスであるため、当分の間は研究開発の積極的な推進による企業価値の向上を目指し、配当は行わない方針です。

 

(18)特定人物への依存について(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

 当社の代表取締役社長である福田惠一は、当社の創業者であり、設立以来当社の研究開発活動の遂行において重要な役割を担っております。こうした状況から、当社は特定の人物に依存しない体制を構築するべく、幹部役職員への情報共有や権限の委譲によって福田に過度に依存しない経営管理組織の整備を進めておりますが、何らかの理由により福田の当社における業務遂行が困難になった場合、当社の経営成績及び事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

 

(19)資金使途について(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:大)

 当社が株式上場において公募増資により調達した資金の使途につきましては、主としてリードパイプラインのほか、新規のパイプラインの開発や必要な経営資金にも充当していく方針であります。

 ただし、急激な外部環境の変化などに対応するために現時点における資金使途以外の使途に充当する可能性があります。また、当社の計画どおりに使用したとしても、計画どおりの効果を上げられない可能性もあります。資金使途に関して、開示すべき事項が生じた場合には、速やかにお知らせいたします。

 

(20)新株発行による資金調達(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

 当社は医薬品の研究開発型企業であり、事業提携先が現状存在しないことにより将来のパイプライン開発進捗に伴うマイルストン収入等を現状受領できないことから、将来の研究開発活動の進捗、遅延、もしくは失敗などに伴い、増資を中心とした資金調達を実施していく可能性があります。その場合には、当社の発行済株式総数が増加することにより、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。

 

(21)株式価値の希薄化について(発生可能性:高、発生する可能性がある期間:各新株予約権発行後から10年の間、影響度:小)

 株式価値の最大化を図るため、インセンティブを目的とした役員及び従業員に対する新株予約権によるストック・オプション制度、並びに役員に対する譲渡制限付株式報酬制度を採用しております。今後においてもストック・オプション制度や譲渡制限付株式を活用していくことを検討しており、現在付与している新株予約権に加え、今後付与される新株予約権等の権利行使が行われた場合には、保有株式の価値が希薄化する可能性があります。

 

(22)自然災害等について(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:大)

 当社、あるいは研究開発の委託先である企業や研究機関の拠点において、自然災害や火災といった不測の事態が発生した場合、設備に被害が生じるおそれがあります。これにより、事業活動の一部または全部が中断して研究開発に遅延が生じるほか、損害を被った設備の修復に多額の費用を要する懸念があります。

 とりわけ、近年懸念されている気候変動に伴い、台風や洪水をはじめとする自然災害が頻発・激甚化した場合、自社のみならずパートナー企業を含めたサプライチェーン全体に甚大な被害をもたらすリスクが存在します。これらの事象が顕在化した場合、当社の経営成績及び事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(23)情報管理について(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

 当社の事業において、研究または開発途上の知見、技術、ノウハウ等は非常に重要な機密情報であります。当社は、その流出リスクを軽減するため、必要に応じて取引先等との間で守秘義務等を定めた契約を締結するとともに、個別の事情に応じた情報開示を行うなど、厳重な情報管理に努めております。また、情報セキュリティ管理規程を定め、これを基に情報セキュリティの維持・管理に努めております。

 しかしながら、取引先等によりこれが遵守されなかった場合、あるいは、何らかの原因により、情報システムの停止、個人・顧客情報の流出やコンピュータ・ウイルス、ハッカー、不正侵入等が生じた場合には、重要な機密情報が漏洩する可能性があり、このような場合には、当社の経営成績及び事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当社は決算期変更に伴い、当事業年度は14ヶ月の変則決算となっております。このため、経営成績に関する前年同期との比較は行っておりません。

 

(1)経営成績等の状況の概要

 当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。

 

① 経営成績の状況

 当事業年度(2024年11月1日~2025年12月31日)における我が国の経済は、堅調なインバウンド需要に加え、雇用・所得環境の改善により緩やかな回復基調が維持されたものの、金融資本市場の変動、米国の政策動向、不安定な国際情勢など、国内景気は依然として不透明な状況が続いております。

 日本の再生医療業界においては、2014年に施行された改正薬機法によって、再生医療への「条件及び期限付承認制度」が導入され、また承認審査期間の短縮や当局との事前相談に関する優先的支援などを提供する「先駆的医薬品等指定制度」が2019年に法制化されるなど、優れた再生医療等製品を逸早く実用化できる仕組みが整っています。

 当事業年度における事業の概況としましては、虚血性心疾患に伴う心不全患者を対象とする他家iPS細胞由来心筋球の開胸投与による治療プログラム(HS-001)をリードパイプラインとして、開発を継続しております。実施中の冠動脈バイパス手術と併用する第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験(LAPiS試験)において、第1四半期会計期間に最終症例の投与が完了している低用量群5例と高用量群5例の10例の患者組入れについては、経過観察中であります。

 また、患者さんにとって負荷の少ないカテーテル投与による治療プログラム(HS-005)につきましては、国内での臨床試験開始に向け、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)へ治験届を提出しており、2026年に治験における患者さんへの投与を開始するという目標に向け、治験施設の選定等も順調に進んでおります。なお、投与カテーテルシステムに関する日本ライフライン㈱との協業・提携についても、計画どおり順調に進捗しております。

 他方、当社の事業パートナーであったノボノルディスク・エーエスより、独占的技術提携・ライセンス契約につきまして、同社における主力事業領域への集中と他領域に関する戦略の見直しを理由に、2025年9月29日にライセンス契約を解消する旨の通知を受けました。本通知の結果、導出していた当社の開発・製造・販売に関する権利及び知的財産権等は、当社へ返還され、当社はHS-001ならびにHS-005に関して、全世界の権利を保持することとなりました。

 以上の結果、当事業年度の経営成績は、売上高は3,026,500千円、営業利益は272,156千円、経常利益は288,985千円、当期純利益は190,608千円となりました。

 なお、当社は医薬品事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の業績記載を省略しております。

 

② 財政状態の状況

(資産)

 当事業年度末における資産合計は7,675,749千円となり、前事業年度末に比べ608,155千円増加しました。流動資産は7,143,534千円となり、前事業年度末に比べ739,719千円増加しました。これは主に現金及び預金が新株予約権の行使による株式の発行等により1,538,843千円増加した一方、貯蔵品が38,467千円、未収入金が回収により26,700千円減少したことによるものであります。固定資産は532,214千円となり、前事業年度末に比べ131,564千円減少しました。これは主に差入保証金の回収により投資その他の資産が107,239千円減少したことによるものであります。

(負債)

 当事業年度末における負債合計は480,837千円となり、前事業年度末に比べ36,492千円増加しました。流動負債は320,328千円となり、前事業年度末に比べ38,253千円増加しました。これは主に未払金が91,341千円増加した一方、未払法人税等が45,076千円減少したことによるものであります。固定負債は160,508千円となり、前事業年度末に比べ1,760千円減少しました。これは主に繰延税金負債が3,206千円減少した一方、資産除去債務が2,200千円増加したことによるものであります。

(純資産)

 当事業年度末における純資産合計は7,194,912千円となり、前事業年度末に比べ571,662千円増加しました。これは主に新株予約権の行使による株式の発行等により資本金及び資本準備金がそれぞれ194,384千円増加したことによるものであります。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べて1,538,843千円増加し、6,836,009千円となりました。

当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動による資金の増加は1,080,526千円となりました。主な内訳は、売掛金の減少768,250千円、及び税引前当期純利益288,985千円を計上したことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動による資金の増加は72,636千円となりました。主な内訳は、敷金及び保証金の回収による収入107,239千円によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動による資金の増加は375,762千円となりました。主な内訳は、新株予約権の行使による株式の発行による収入381,053千円によるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社は生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

b.受注実績

 当社は受注生産を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

c.販売実績

 当社は医薬品事業の単一セグメントであり、当事業年度における販売実績は以下のとおりです。

区分

当事業年度

(自 2024年11月1日

 至 2025年12月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

医薬品事業

3,026,500

(注)1.当事業年度は14ヶ月の変則決算となっており、前年同期との比較は行っておりません。

2.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自 2023年11月1日

  至 2024年10月31日)

当事業年度

(自 2024年11月1日

  至 2025年12月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

ノボノルディスク エー・エス

872,110

99.8

3,025,000

100.0

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成に当たって、採用している重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項」の「重要な会計方針」に記載のとおりであります。この財務諸表の作成に当たり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。

 

② 経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(売上高)

 売上高は3,026,500千円となりました。これはノボノルディスク エー・エスとの独占的技術提携・ライセンス契約における開発マイルストンの達成内容により収益計上していることによるものであります。

 

(販売費及び一般管理費、営業利益)

 販売費及び一般管理費は、2,754,343千円となりました。これは主に、実施中の冠動脈バイパス手術と併用する第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験(LAPiS試験)及び他家iPS細胞由来心筋球のカテーテルによる投与を目標とする第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験(EMERALD試験)の準備によるものであります。

 この結果、営業利益は272,156千円となりました。

 

(営業外損益、経常利益)

 営業外収益は、58,511千円となりました。これは主に、国立研究開発法人日本医療研究機構(AMED)の補助事業によるものであります。

 また、営業外費用は、41,682千円となりました。これは主に、外貨入金時の為替差損41,522千円によるものであります。

 この結果、経常利益は288,985千円となりました。

 

(法人税等合計、当期純利益)

 法人税等合計は、法人税等の計上により98,376千円となりました。

 この結果、当期純利益は190,608千円となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析

 キャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

④ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社の事業活動における運転資金需要の主なものは、研究開発に係る人件費及び心筋製造に係る外注費及び資材です。将来の事業活動に必要な資金を確保し、適切な流動性を維持することを基本方針としております。

 運転資金及び設備投資等の資金調達につきましては、自己資金を充当することを原則としながら、必要に応じて株式市場より調達を行う方針であります。

 資金の流動性につきましては、2025年12月末時点における現金及び現金同等物の期末残高は6,836,009千円であり、当面の運転資金はカバーされ、流動性に支障がない水準であると考えております。なお、事業計画外の緊急を要する資金需要がないか、事業計画を進捗管理することで、流動性リスクをコントロールしております。

 

⑤ 経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社の経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標」に記載のとおりであります。

 

⑥ 経営成績に重要な影響を与える要因について

 当社の経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり認識しており、これらのリスクについては発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存であります。

 

⑦ 経営者の問題意識と今後の方針について

 当社の経営者は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、当社が今後さらなる成長を遂げるためには、さまざまな課題に対処することが必要であると認識しております。

 それらの課題に対応するために、経営者は常に事業環境の変化に関する情報の入手及び分析を行い、状況に合わせて企業戦略を刷新していくことで、さらなる事業拡大を図ってまいります。

 

 

5【重要な契約等】

 当社の重要な契約は次のとおりであります。

(1) 特許実施許諾に関する契約

契約名

契約相手

契約締結日

契約内容

覚書

学校法人慶應義塾

2018年12月25日

当社が学校法人慶應義塾から譲渡または再実施権付独占的通常実施権の許諾を受けた心筋再生医療に関する特許権等の実施条件を定めた契約。対価として、当社は売上に応じて定められた実施料を支払う。

特許実施
許諾契約

学校法人慶應義塾

2016年10月17日

学校法人慶應義塾の有する純化精製方法(脂肪酸合成阻害法)に関する特許の再実施許諾権付独占的通常実施権の提供を受け、当社は当該特許を実施する際は対価を支払う契約。契約期間は締結日から5年で、終結の申し出がない場合には自動的に1年間延長され、その後も同様。

特許実施権許諾契約

iPSアカデミアジャパン㈱

2019年4月1日

当社がiPSアカデミアジャパン㈱から非独占的通常実施権の許諾を受けた、iPS細胞を心筋再生医療に使用する上での基本となる特許権等に関する契約。対価として、当社は売上に応じて定められた実施料を支払う。契約期間は締結日からすべての対象特許が存続期間満了または不存在となる日まで。

 

(2)業務委託契約

契約相手

相手先の所在地

契約内容

㈱ニコン・セル・イノベーション

日本

開発受託及び製造受託サービス基本取引契約。

㈱リニカル

日本

HS-001及びHS-005の第Ⅰ/Ⅱ相試験に関する業務の委受託契約。

日本ライフライン㈱

日本

HS-005の細胞注入針の製造委託契約及び共同開発契約等。

 

 (3)当社は、事業パートナーであったノボノルディスク・エーエスと以下の独占的技術提携・ライセンス契約を締結しておりました。2025年9月29日に同社における主力事業領域への集中と他領域に関する戦略の見直しを理由に、ライセンス契約を解除する旨の通知を受けました。本通知の結果、導出していた当社の開発・製造・販売に関する権利及び知的財産権等は、当社へ返還されることとなり、当社はHS-001ならびにHS-005に関して、全世界の権利を保持することとなります。

契約名

契約相手

契約締結日

契約内容

COLLABORATION & LICENSE AGREEMENT

ノボノルディスク エー・エス

2021年5月4日

ノボノルディスク エー・エスとのヒトへの治療用途(以下、本用途)におけるHS-001, HS-005を含む他家iPS細胞由来心筋球(細胞株、投与方法、適応症は問わない)に関する、全世界を対象とする再実施許諾権付独占的技術提携・ライセンス契約。

他家iPS細胞由来心筋球の本用途について、日本国内に関しては、当社が臨床開発を進め、日本以外の全世界に関しては、開発・製造・販売権をノボノルディスク エー・エスへと付与し、同社が開発・製造・販売に関する全ての費用を負担する。当社は契約一時金・マイルストン合計で総額最大598百万ドル、及び海外の売上に応じて一桁後半から二桁前半パーセントのロイヤリティを受領する。

 

6【研究開発活動】

 当社は心筋再生医療の事業化を加速させるために、虚血性心疾患に伴う心不全患者を対象とする他家iPS細胞由来心筋球の開胸投与による治療プログラム(HS-001)をリードパイプラインとして、開発を継続しております。

 当事業年度においては、第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験(LAPiS試験)を実施中であり、既に全10例の投与組み入れを完了しており、2026年1月に治験で既定した52週フォローアップが完了しております。

 また、患者さんにとって負荷の少ないカテーテル投与による治療プログラム(HS-005)につきましては国内で

の臨床試験開始に向け、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)へ治験届を提出しており、2026年に治験に

おける患者さんへの投与を開始するという目標に向け、治験施設の選定等も順調に進んでおります。

 研究開発従事人員数は28人であり、当事業年度の研究開発費の総額は2,032,919千円となり、販売費及び一般管理費全体の73.8%と大きな割合を占めております。研究開発費は主に委託研究開発にかかるものであり、研究開発活動の具体的な内容は、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 また、研究開発の詳細については、「第1 企業の概況 3 事業の内容」に記載のとおりであります。